「プロレスマスク」を巡ってもつれる ファンと選手、販売業者の複雑な人間関係(朝日新聞デジタル&[アンド]) - Yahoo!ニュース

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プロレスを象徴するアイテムの一つ「マスク」。選手にとっての商売道具は、ファンからすれば究極のプロレスグッズ。人気選手のマスクは、時に高値で取引される。

【写真】超レア! 大川さんのプロレスマスクコレクションなど

&M編集部は2019年11月、東京・水道橋にあるプロレスマスク専門店「デポマート」を訪れた。選手から直接マスクを仕入れ、一般向けに販売しているデポマートは、プロレス業界ではよく知られた存在だ。同店のオーナー大川昇さんに、プロレスマスク取引の裏側や、アイテムとしての魅力を語ってもらった。

「マスクを売ってほしい」と言ったら選手に驚かれた

2001年に開店したプロレスマスク専門店「デポマート」。店内には100種類を超えるマスクがひしめき、数千円のものから、十万円を超えるものまで陳列されている。

マスクの市場価値は「デザイン」「ディテール」「製造メーカー」「製造時期」「選手の価値(実績)」「試合での着用の有無」「試合の価値」などから決まり、ビッグマッチで着用された特別なデザインや、後世に語り継がれる名勝負で着用されたもの、素材でいえば、本革が使われている年代ものが高く評価される傾向にあるという。

どのファクターに価値を置くかは人によって異なるが、大川さんは「選手の価値」と「試合の価値」を重要視する。

「たとえばデポマートでは、同じ選手のマスクでも、駆けだしの時代とスターになった後で価格を変えています。その分岐点となったような試合のマスクも高く評価します。実績や人気に応じて価格が上昇すると、『昔は安く買えたのに』と言われることもありますが、僕の感覚では当たり前のこと。それが選手へのリスペクトだと考えます」

プロレスマスク販売店や個人売買のサイトには、出どころが不明瞭なマスクやレプリカなどが出回っている。「本物」を扱うことにこだわる大川さんは、マスクを選手から直接仕入れ、選手にかぶってもらったところを撮影した“証拠写真”もつけて販売している。

「デポマートは高いってよく言われるんですよ。以前、ドクトル・ワグナー・ジュニア選手にマスカラ戦のマスクと同じものを作ってもらって8万円で売り出したことがありました。ところが程なくして、選手を通さずに作られたコピー品がネットなどで2、3万円で売られていた。コピー品で十分な人は、それを見て『デポマート、高いじゃないか』となる。逆にドクトル・ワグナー・ジュニア選手のコアなファンは、うちの金額に納得して購入してくれます。選手の価値を認めてくれているからだと思います」

いつからこれほどマスクとストイックに向き合うようになったのか。マスクにはまった原点を尋ねると大川さんの顔がほころんだ。

「きっかけはミル・マスカラス選手です。子供の頃から大のプロレスファンで、いつかメキシコで大量のマスクを買おうと妄想していました(笑)」

大川さんは20歳でプロレス専門誌のカメラマンになり、3年後に念願のメキシコへ。マスクを探しに街を巡ると、土産用の安価なレプリカばかりが売られていた。大川さんはどうしても本物が欲しくなった。

「当時は本物のマスクが一般には流通していない時代。試合後に控室に行って選手に売ってほしいと頼むと『プレゼントするよ』と言ってくれました。彼らには『売る』という発想がなくて、自分のマスクを欲しいという異国の人間がいることを喜んでくれました」

「当時僕は駆け出しのカメラマンです。彼らにとって重要な人間でもなかったのに、快くプレゼントしてくれた。その心意気に感動したことを、今でもよく覚えています」

プレゼントの恩返しをしたい一心で、大川さんは知り合いの海外選手が来日した際に、選手とその家族を食事などに連れていくようになった。プロレスマスクが趣味の域を出て、選手との友情の証しに変わった瞬間だった。

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March 08, 2020 at 10:20AM
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