ロドリはザルの目、マンチェスター・シティの生命線こそが弱点だった。モウリーニョが突いた敵の脆さ - フットボールチャンネル

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シティの生命線は弱点

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【写真:Getty Images】

 ボール保持率は32.6%:67.4%、シュート本数は3本:18本で、パス本数も337本:686本。スタッツを見る限りでは、ほとんどの項目でマンチェスター・シティが上回っている。しかし、得点を奪うことができなかったシティはリーグ戦6敗目を喫した。

 試合はスタッツが示すように、シティがボールを握る展開が続いた。お馴染みの4-3-3で相手のディフェンスを動かし、空いたスペースを徹底的に突く。トッテナムは4-4-2の形で低い位置にブロックを築いてシティの攻撃を水際で防いだ。

 ボールを奪われたときの即時回収こそが、ペップ・グアルディオラが標榜するサッカーの生命線のはずだった。すぐにボールを奪い返せるからこそボール保持が可能で、切れ目なく攻め続けることができる。シティはこれまでもそうして試合を支配してきた。

 しかし、生命線は絶対的な武器ではない。ストロングポイントだが、ウィークポイントにもなり得る。シティの生命線はこの試合で、弱点として現れた。

 ボールを奪われたときにすぐに奪い返せない。敵陣で奪われるとロングカウンターを喰らってしまう。ソン・フンミン、デリ・アリ、ルーカス・モウラが絡むロングカウンターはトッテナムの武器でもある。ボールを持つことができても、カウンターからピンチを招く。結果として、シティの攻撃は散発的になった。

決定機を活かせなかったシティ

 シティのメンバー構成を見ても、やはり被カウンターに対しては劣勢とならざるを得ない選手が並んでいた。フェルナンジーニョは対人守備に優れるが、センターバックではその特長は活きない。ニコラス・オタメンディは不可解なポジショニングで味方を混乱させてしまう。

 アンカーのロドリは何もできなかった。データサイト『Who Scored』によれば、ロドリはこの試合でタックルもインターセプトもゼロ。フィルターとしてはザルの目の対応だった。復帰したエメリック・ラポルトとジョン・ストーンズを使えないという苦しい台所事情が、ペップ・グアルディオラを苦しめた。

 シティの決定機は36分に訪れた。ラヒーム・スターリングのシュートは防がれたが、こぼれ球を拾ったケビン・デブルイネがセルヒオ・アグエロにパスを送る。これにセルジュ・オーリエが身体を寄せると、アグエロが転倒した。ファウルの笛は吹かれずに試合は続行されたが、約2分後にマイク・ディーン主審はプレーを止めてPKの判定を下した。

 イルカイ・ギュンドアンのPKはウーゴ・ロリスに弾かれた。こぼれ球に詰めたスターリングとロリスが接触したように見えたが、ファウルとはならなかった。このプレーに対して小競り合いが起こり、オレクサンドル・ジンチェンコとトビー・アルデルワイレルドに警告が与えられた。

試合の様相を分けたイエローカード

 前半終了間際にもチャンスが訪れたシティだったが、結局ゴールを奪えずに45分を終えた。後半もシティがボールを握る展開が続いたが、1本のCKを契機に試合の様相は大きく変わった。

 シティは右サイドでCKを獲得した。キッカーのリヤド・マフレズはペナルティーサークルで待つギュンドアンへグラウンダーのパスを送ったが、これをニアサイドにいたハリー・ウィンクスが予測を働かせてインターセプトする。そのままドリブルでカウンターを開始してギュンドアンを振り切ると、横から寄せられたジンチェンコと接触して転倒した。

 ボールへチャレンジせずにカウンターを止めたジンチェンコには警告が与えられた。2枚目のイエローカードとなり、ジンチェンコは退場。シティは残された約30分を10人で戦わなければならなくなった。

 1人多くなったトッテナムは63分に左CKのチャンスを得た。ショートコーナーからウィンクスがクロスを上げるが、カイル・ウォーカーに跳ね返される。しかし、これを拾ったモウラが浮き球のパスを中央に送ると、ステフェン・ベルフバインは胸トラップから右足を振り抜き、先制ゴールを奪った。

 22歳のベルフバインはこの冬にPSVから加入したばかり。移籍後初出場が初先発となり、さらにはシティとのビッグマッチ。プレッシャーのかかるデビュー戦でゴールを決める勝負強さを、61022人の大観衆が詰めかけたトッテナム・ホットスパー・スタジアムで見せた。

90分継続させたトッテナムのプラン

 その数分後にトッテナムは追加点を奪った。直前にデリ・アリに代わって投入されたタンギ・ヌドンベレが縦パスをソン・フンミンにつける。ニコラス・オタメンディがエリク・ラメラに寄せたことでDFラインに穴が生まれた。ソン・フンミンはそのスペースで前を向いてシュートを放つと、フェルナンジーニョの足に当たってコースが変わったシュートはゴールへと吸い込まれた。

 ギュンドアンがPKを決めていれば。ジンチェンコの退場がなければ。決定機を逃し続けていなければ。シティの敗北をそう捉えることももちろん可能だと思う。しかし、ネガティブトランジションでボールを奪い返せず、相手に何度もロングカウンターを許したディフェンスの脆さは確かに存在した。

 しかし、前半を見る限り、トッテナムの戦いは90分続けられないと思っていた。モウラ、アリ、ソン・フンミン、ベルフバインの前線4枚は自陣に戻ってブロックを築き、ボールを奪えばロングカウンターを発動させていた。ベルフバインが足をつって70分で退いたことから分かるように、その負担は大きかった。それでも時折ポジションチェンジをしながら交代で休み、疲れたら交代させることで、90分間その戦いを貫いた。

 モウリーニョはトッテナムの指揮官に就任後、トップ6を相手に初めて勝利を収めた。2つの古巣、マンチェスター・ユナイテッドとチェルシーに敗れ、世界王者リバプールにも敗れた。しかし、4試合目にして、宿敵ペップ・グアルディオラの率いるチームを倒した。

(文:加藤健一)

【了】

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