エネ庁の「ベースロード市場見直し議論」の落とし穴|日経エネルギーNext - Nikkei Business Publications
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資源エネルギー庁がベースロード(BL)の見直しに着手した。スポット市場で市場分断が頻発するようになって、BL市場での約定価格で取引できないケースが増えてきたというのが見直しの理由だ。しかし、そこには本来の市場機能を省みないエネ庁の姿が色濃くにじんでいる。
(出所:123RF)
燃料高騰に端を発した厳しい環境変化に接して、日本の電力ビジネスや電力市場のひずみが顕在化しつつある。
電力自由化後、手を付けていなかった燃料調整費制度や最終保障供給約款の見直しがテーマに上がり、仕入れ価格を料金にうまく転嫁できない小売電気事業者の撤退が相次いでいる。
火力電源の発電コストが膨らむ一方で、限界費用ゼロの太陽光発電の有用性を高める調整力としてのDR(デマンドレスポンス)や蓄電能力の開発は遅れている。
価格シグナルで課題解決を自律的に促す電力市場の整備の遅れが、事態をより深刻なものにしていると言っていいだろう。
そんな中、これまでの電力システム改革の混乱を象徴するかのような議論が資源エネルギー庁の審議会(制度検討作業部会)で続いている。ベースロード(BL)市場の見直しである。
なぜ、いま、BL市場の見直しなのか。エネ庁はその理由を図1のように説明する。
BL市場は制度的措置、“市場”とは言えない
BL市場で約定した取引はJEPX(日本卸電力取引所)を介して受け渡しを行う。この仕組み上、スポット市場でエリア間に値差が生じた場合、その影響を受ける。市場分断が頻発するようになった今日、BL市場で決めた価格で取引できないケースが増えているというのだ。
BL市場は日本特有のものだが、そもそも何を目指したものだったのか、今一度、振り返っておきたい。
過去の審議会資料には「BL市場は先渡市場の一種」(第22回および第63回制度検討作業部会)との記述がある。
ただし、旧一般電気事業者が大半を保有するベースロード電源に新電力がアクセスすることを容易にするのが目的で、「売り手である大手電力はベースロード電源価格相当以下で一定量を市場に供出し」、「買い手の新電力には購入可能量に制限を設ける」ところが通常の先渡市場とは異なる。
エネ庁は「新電力が年間固定価格で購入可能とする市場」として、先渡や先物取引と並ぶヘッジ手段として、新電力の積極的な活用を推奨してきた。
エネ庁はこれを"市場"と呼ぶ。確かに、価格決定にはシングルプライスオークション方式を採用している。だが、BL市場は市場とは言えない。
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