目の前のモチーフに自分を編み込む:田渕正敏展「Choice」で体験する新しい“物の見方” - WIRED.jp
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東京・銀座のギャラリー「ガーディアン・ガーデン」で、2020年10月20日(火)~11月20日(金)までの1カ月間、田渕正敏展「Choice」が開催されている。ガーディアン・ガーデンは、公募展を通して若手のアーティスト/クリエイターを発掘するコンペティションギャラリー。同ギャラリーで50回にわたり開催されている展覧会「The Second Stage at GG」では公募展入選者たちの活躍を紹介しており、今回の「Choice」はその第51回目となる。
田渕正敏は、2014年にガーディアン・ガーデンで行なわれた公募展・第11回グラフィック「1_WALL」展で、ストライプ柄のシャツを拡大し緻密に描写した「stripe」を発表、ファイナリストに選出された経歴をもつ。「シャツの柄がどのように繋がって形を成しているかは、注意深く観察しなければ分からない」というメッセージとともに、視覚へと訴えかけられるモチーフの妙を表現した。
本展「Choice」では、田渕が継続して制作してきた、青色の色鉛筆や絵の具で日用品を細密描写するシリーズを中心に展示される。ぶどうが入った透明なパッケージや、洗濯ばさみが大量についた物干しなど、日常に存在するモチーフを非日常的な視覚で捉え、新鮮な魂を吹き込んでいる。さらに、ダンボールやアクリルなどに支持体を移した作品や、変形するハンガーの動きに着目した映像作品にも注目したい。
「モチーフに選んだものには全て何かしら視覚に引っかかるところがある」と田渕は語る。わたしたちも日常的になんとなく気になったものを写真に撮ったり脳内に記憶していたりすることがある。また、対象物をよくよく眺めてみることで愛着が湧いたりもする。田渕はそれらを絵にすることが、より濃密にモチーフの魅力に迫ることのできる手段だと語る。
モチーフをキャンバスに落とし込む工程は、目の前に拡がる光景に自身がもつ視線を編み込む行為ともいえる。物体と対峙することで、それを視覚的に描く「線」をバラバラにほどき、見る者の主観を巻き込みながら再構築する行為だからだ。アウトプットの仕方によってモチーフを構成する1本1本の線は、その対象物に依存することなく、いつでもこちら側に引き寄せることができる。外部から取り込んだ情報を自分のものとしてもう一度生み出す、「表現」の大切さを、田渕の作品は教えてくれる。
光の存在を正確に捉え、その姿がものの見事にデッサンされたモチーフの数々だが、作品を近くで見ると筆のかすれた線が編み込まれており、その一見無機質な行為が実はとても有機的な挑戦なのだということが見て取れる。
透明のプラスチックケースに入ったぶどうのみずみずしさが増して見えたり、物干しがトランスフォームする面白さが浮き彫りになったり……。田渕の鋭利な観察眼によって、知っているはずのモチーフが生まれ変わって見えるその感覚は、視覚とその先にあるものがもつ関係性の無限に広がっている様子をわたしたちに見せてくれることだろう。
The Second Stage at GG #51
田渕正敏展 「Choice」
日時:2020年10月20日(火)〜11月20日(金)11:00〜19:00〈入場無料・日曜祝日休館〉
主催・会場:ガーディアン・ガーデン(〒104-8227 東京都中央区銀座7-3-5 ヒューリック銀座7丁目ビルB1F)
・関連トークイヴェント〈オンライン配信〉
2020年11月9日(月)19:10〜20:40
「モチーフは選ばれた」
関川航平(美術作家)×田渕正敏
2020年11月18日(水)19:10〜20:40
「Choice 展に至るまで」
松田洋和(グラフィックデザイナー)×田渕正敏
いずれも参加無料・要予約、ご予約はこちらから。
田渕正敏|MASATOSHI TABUCHI
2011 年よりイラストレーターとして活動を始める。同時期にグラフィックデザイナー松田洋和と造本ユニット 「へきち」 を結成。アパレルブランド Kaiki のインヴィテーション、 Polaris の 7inch アナログ盤、 YCAM 新作コンサートピース “Sound Mine” などのイラストレーションを担当。2014 年、 第 11 回グラフィック「1_WALL」ファイナリスト。
[ 田渕正敏展「Choice」 ]
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October 30, 2020 at 08:00AM
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