「不倫は社会問題ではない」夫婦でバッシングされた金子恵美、加熱報道と - 福島民友

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 元衆議院議員で、現在はコメンテーターとしても活躍する金子恵美さん。2016年に夫・宮崎謙介氏の不倫が発覚したが、夫婦関係を継続していることでも大きな注目を集めている。著名人の不倫は、報道やネット、SNSでも痛烈に批判され、当事者を再起不能になるほど追い詰めることの多い昨今。「許す」ことを選んだ金子さんは、そんな風潮に何を思うのか? バッシングにさらされた当時の心境、「不倫は社会問題ではない」という言葉の意味とは? いま、語る側にいるからこその思いを聞いた。

【写真】バッシング乗り越え今では笑顔…夫・宮崎謙介と金子恵美夫妻

■「夫婦のあり方はそれぞれで異なる」、不貞を許したことには批判も…

 金子恵美さんが、夫の宮崎謙介氏から不倫を告白されたのは、2016年2月のこと。出産直後の病院でのことだった。共に衆議院議員だったことに加え、同じ時期にタレントの不倫騒動が世間を賑わせていたこともあり、メディアやネットは沸騰。日本中から猛バッシングを受け、宮崎氏は議員辞職を決意する。ところがその後、世間の予想に反して2人は夫婦関係を継続。金子さんが議員を退いた後はそろってバラエティ番組に出演し、不倫騒動を振り返ることもあった。世間はそんな2人を「ビジネス夫婦」と揶揄。さらに「夫の不倫をあっさり許した妻」として、金子さんにも批判が殺到するようになる。

 あの騒動から4年。一般論では許しがたいパートナーの行為を、なぜ許すことができたのか。そしてどのように夫婦としての絆を深めてきたのか?

──なぜ今、本書『許すチカラ』(集英社)を書こうと思ったのですか?

【金子恵美】まず大前提として私がお伝えしたかったのは、「夫婦のあり方は夫婦それぞれで異なる」ということでした。私たちは夫婦関係を継続する選択をしましたが、これが「正解」だと押し付けたいわけでもないんです。ただ私たちの選択に対して、「旦那の不貞を許すのがカッコいいと思ってるのでは?」といった批判があったのも事実で──。

──芸能人の不倫騒動でも、離婚に至らないと「なぜ?」という憶測が飛びがちですね。

【金子恵美】「妻は夫の不倫を許すべきという風潮にしてほしくない」という意見もありました。そんなつもりはまったくないんです。ただ今の社会は「正解」にこだわるあまりに、自分とは異なる意見を受け入れられない方が増えている。そんな不寛容な社会に息苦しさを感じている方がいたとしたら、「こういう視点を持てばもっと生きやすくなるのでは?」といったヒントを私の経験を通してお伝えできればと本書を綴りました。

──不倫によって特に著名人は、再起不能にまで追い込まれることも。なぜここまで大騒動に発展してしまうのだと思いますか?

【金子恵美】今の風潮の始まりとなったのは、ベッキーさんだったんじゃないでしょうか。同時期のスキャンダルだったため、我が家では同志という意味も込めて「ベッキー先輩」と呼んでるんですが(笑)。やはり世間が抱いていたクリーンなイメージとのギャップが、世間を驚かせたところもあったのでしょう。その点では我が家も議員夫婦でしたから、近いものがあったのかもしれません。

──当時、世論も巻き込んで報道がどんどん加熱していきました。

【金子恵美】 現代はやはりネットの波及力が凄まじいですよね。週刊誌がスッパ抜いて、テレビのワイドショーが取り上げ、それを見た一般の方がネットで拡散する。すると世間が盛り上がっていると捉えて、週刊誌やテレビが後追い報道をし、ネットもさらに盛り上がり…といったサイクルで、1つの話題がいつまで経っても鎮火しないのが現代の不倫報道の特徴だと思います。

──問題の根源は“ネット世論”にあるのでしょうか?

【金子恵美】それも1つにはありますよね。不倫に限らず、自分は絶対に正しいと考え、ターゲットを見つけたら完膚なきまでに叩きのめしたいという人が少なからずいる現代社会が気掛かりです。ただ私は「不倫は社会問題ではない」という立場にいますので、今の週刊誌の報道姿勢には特に疑問を感じています。

──たしかに不倫は社会問題ではなく、あくまでプライベートな夫婦間の問題です。

【金子恵美】もし週刊誌サイドに「不倫は社会問題である」という意思があるなら、それこそ刑罰にすべきという問題提起をするくらいの信念を持って取り上げてほしいんですよ。だけど今の週刊誌報道は、中途半端に読者の関心を煽っているようにしか見えません。当事者が社会的に再起不能になろうとも、家庭が壊れようとも報道する意義がある。そこまでの覚悟で報道に臨んでいる週刊誌はどれほどあるでしょうか。

──現在はコメンテーターとしても活躍されています。メディアで叩かれた側として、発言で気をつけていることはありますか?

【金子恵美】発言者として常に念頭に置いているのは「ファクトは1つ」。事実確認をしっかりした上でしか、言及はするべきではないと考えています。ただどうしても事実を得られておらず、それでも発言を求められた際には「これは推測の域になりますが」と前置きをすることもあります。なるべく避けたいところですけど。

──たしかに不倫のように、当事者同士でしかわからないことを「推測」で物を言うのは危険かもしれません。

【金子恵美】はい。またバッシングを受けた側としては、当事者だけではなく、家族や関係者にも配慮して物を言うように心がけています。

■安倍前総理の辞任、物議を醸したラサール石井への発言に「後悔はない」

──最近では安倍前総理の辞任に関して、金子さんの発言が物議を醸したこともありました。

【金子恵美】辞任表明後のラサール石井さんの発言に対し、「総理になってから言ってもらいたい」と言った件ですよね。あれは番組内の発言全体を文脈で捉えてもらえたら「総理経験者以外、政治を語るな」と言っているのではないとご理解いただけると思っていたのですが、ただ私自身安倍総理に感情移入してしまったこともあって、誤解を招くような表現を使ったことは反省すべきでしたね。ただ、あの発言をしたことは後悔していません。

──信念を持った上での発言だったと。

【金子恵美】私が言いたかったのは、健康を理由に志半ばで退場することが政治家にとってどれほどつらいことか、ということでした。安倍さんとはイデオロギーが真っ向違うあの蓮舫さんでさえ、まず8年間総理を務めたことに対してねぎらいの言葉をかけている。これは選挙に出て国家のために働く政治家であれば、誰もが共感できることだという表れですよね。

──『許すチカラ』の中では蓮舫さんへの意見も綴られていますが、その点では認められているんですね。

【金子恵美】要は、最低限の敬意が払えるかどうかの問題だと思うんです。支持政党によって思想の違いがあるのは当然ですし、政策については戦わせ合ったほうがいい。だけど、こと健康に関しては、意見が違っても、闘病中の人に対して人としての当たり前の優しさや相手を気遣う気持ちを誰しも持つべきではないでしょうか。日本人はそこまで不寛容になってしまったのか…と悲しみすら感じてしまいます。

──「総理になってから」発言も、ネットに波及して騒動に発展しました。

【金子恵美】夫からは「エゴサだけはしないでね」と言われてます(笑)。私は今はSNSをやっていないので(取材当時。9/20にオフィシャルTwitterアカウントを開設)、特に検索することもないんですけど。ただ私もいくつもの批判にさらされて思うのは、特にネットニュースは記事のタイトルを鵜呑みにしてしまう方が多いということですね。

──記事のタイトルのつけ方にも、問題はあるかもしれないですね。

【金子恵美】そうですね。ただネット記事に慣れてしまったことで「この事象の背景に何があるのか?」といった文脈を読むリテラシーが全体的に下がってきているような気もします。その点については教育の問題も大きいと思います。ネット社会であることはもはや不可逆ですから、これからの子どもたちには文章を読み取る力や、価値観の多様性はもちろんのこと、誹謗中傷をしない、たとえされても折れない心を育てることもとても大切だと感じています。

──議員時代から子どもや女性の問題に取り組んでこられましたが、民間の立場で今後はどのような活動をされていく意向ですか?

【金子恵美】議員を辞めて政治を外から見て改めて、国民と政治の乖離の大きさを感じています。お決まりのように公約に「女性活躍」や「少子化対策」を掲げながら、本気で取り組んでいる議員がどれだけいるのかと。こうした問題を解決する一つの方策として、やはり女性議員を増やす必要があります。私は国会議員の器ではないと自覚していますが、少なくとも経験や人脈はありますから、今後は民間の優秀な女性を政治の世界と繋げる架け橋としての活動をしていきたいですね。

(文:児玉澄子)

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