人間が自信を!MIKIKO氏語る五輪開閉会式概念 - 日刊スポーツ

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2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピック開閉会式の企画・演出チームの振付家・MIKIKO氏(42)が日刊スポーツのインタビューに応じ、これまでなかなか表に出てこなかったセレモニーの概念について具体的に語った。人工知能(AI)などの科学技術が急成長する時代に開催する20年大会の意義を「人間が自分たちの自信を取り戻すこと」と位置づけ、国立競技場のフィールドで表現する。【取材・構成=三須一紀】

-開幕まで7カ月。開閉会式の計画はどのような段階にあるか

「もう具体に具体にという感じです。実際に振り付けを考え、手を動かすのは今年から。楽曲を発注し、キャストを選ぶ段階」

-時間がないと感じるか

「個人的にはゴールが見えてきた感じはする」

-現時点でできあがっているものは

「各シーンで告げたいメッセージや、獲得したい読後感は仕上がっている。それをどうやって実際にフィールドに落とし込んでいくかがこれからの作業」

-MIKIKOさんの主な仕事は

「主に五輪開閉会式のフィールドで3時間をどういう風につむいでいくかを責任持って行っている立場です。もちろんパラへの意見も伝えます」

-16年リオデジャネイロ五輪閉会式で引継ぎ式の演出を担当した。本番の開閉会式は何が違うか

「リオの引継ぎ式は、8分間の東京大会のコマーシャルだった。今回はホスト国。もちろん震災、2回目の東京ということもある。ただ、なぜ“わざわざ”4年に1度、五輪をやるのか。世界中の人たちが1カ所に集結して(スポーツの側面から)身体のことを考え直すことを、なぜやっているのか? あらためて考えてきました。それを、見る皆さんにもあらためて考え直す式典にできたらいい」

-2度目の東京五輪

「『もう1回できることが奇跡』という考え方。4年に1回、続けてこられてることがどれだけ、奇跡なことか、あらためて気付くべきだと思う」

-64年とは違い、20年大会の開催意義を見いだせていない国民は少なくない

「64年大会の開会式を見て、その時に少年だった人が『日本はここから変わっていくんだな』と確信したと語るケースが多い。2020年も『ここからまた新しい時代が来るんだ』としなければいけない」

-20年大会後の新しい時代とは

「これだけ、いろいろな技術が発達し、逆に人間の能力が試されているような時代。その中で五輪の『人間の能力だけで記録を出す大会』という部分に立ち返ることが、今回すごく大事。あらためて人間ってすごいんだよと、自分たちで自分たちの自信を取り戻したいというのが、私の中ではある」

-人間とAIの問題なども意識しているのか

「危うく自分たちがつくったもので、自分たちを壊しかねない世の中にもなってきている。そういう危機感も表現したい。ここから何をすべきなのか、何を大切にして生きていくべきかを、五輪のアスリートから学べることも多い。それを表現できることは何なのかとずっと考えている」

-椎名林檎さんとはリオの引継ぎ式の頃から一緒にやってきた。音楽、演出という意味では共通点が多い。共感し、実際に動いているものはあるか

「本当に大事にしている部分は一緒だと思っています。人間の持っている『みずみずしさ』とか、いかに命を燃やしてパフォーマンスする環境をつくれるかとか。ただかっこいいもの、ただ演出がすごいものではなく、1人1人のパフォーマーや演奏に注目してほしい。3時間、人間そのものが演じていることを伝えたい。その部分は一緒だろうと思う」

-引継ぎ式から2人の考え方は一緒か

「一貫している」

-アニメキャラやプロジェクションマッピング、MIKIKOさん独特の振り付けなどで引継ぎ式は世間から称賛された。五輪本番も同様のイメージか

「あれを模しているわけではないけど、香ってくるものもあると思う」

-これまで4時間程度だった五輪開会式を3時間台に縮めようとしている

「1本の作品を見る上で3時間でも長い。その3時間をいかにあっという間に、終わったと思ってもらうかは結構大事。1回もトイレに立ち上がれないようなものをつくりたい」

-リオ五輪では入場行進だけで2時間だった

「どうしても一番長いシーンなので、今までの大会より華々しく見えるよう計画している」

-どんな入場行進か

「選手たちはただ歩くだけで、レッドカーペットの上を、胸を張って行進しているかのような場をつくりたい」

-開閉会式総合統括の野村萬斎さんの存在は

「全てのものに、それをつくってきた歴史があるということを教えてくださる。新しい表現だろうと、古典的な表現だろうと概念の筋を通すことが大事という、アドバイスをいただくことが多い」

-最終聖火ランナーによる聖火台への点火方法は

「クライマックスのシーンなので、テレビで見ている方も含め全員が、その火に集中できるにはどうしたら良いかを考えている」

五輪もパラも、チケット抽選では超高倍率となった4式典。世界中が注目する舞台で、MIKIKO氏をはじめ7人のチームが表現したいメッセージが垣間見えた。

【東京2020開閉会式演出・企画体制】(敬称略)

◆総合統括 野村萬斎(狂言師)

◆五輪統括 山崎貴(映画監督)

◆パラリンピック統括

佐々木宏(クリエーティブディレクター)

◆東京五輪・パラリンピック総合チーム

MIKIKO(振付家)

椎名林檎(歌手)

川村元気(映画プロデューサー)

栗栖良依(クリエーティブプロデューサー)

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